オーダーメイドの食器を注文する前に考えておきたいこと

茶碗

できるだけ毎日の生活を豊かにしようと考えています。

豊かと言っても、人それぞれですが、私のが考えるに豊かな生活とは「良い物」に囲まれているとこが大切なんじゃないかと思います。

そう考えたとき、毎日使う食器を特別なもの、世界にただひとつだけの自分専用「オーダーメイド」できたら最高じゃないですか。

なぜオーダーメイドの食器なの?

始まりは富山の料亭

富山の有名な食べ物といえば、白えび(シロエビ)ですよね。

富山湾の宝石とも呼ばれており、TVや雑誌のメディアでもよく紹介されている食材です。

おいしいのは当たり前ですが、足の早い(時間経過に敏感で傷みやすい)ため、産地で食べつ必要があるのも魅力的です。

そんなわけで、富山へ白えびを食べに行くことにしました。せっかく富山まで行くので、ちょっと良い所で食べたいと思い、老舗の料亭「松月」へ行きました。

松月

海に近い港町の路地の奥に「松月」はありました。本当に奥まったところにあるので、途中でちょっと不安になりましたね。

歴史を感じる重厚な外観に負けず、お部屋も広く、趣向を感じさせるものでした。

料理は、季節の会席を事前に予約しましたが、合わせる飲み物は、当日のお店で選ぶことにしていました。

満寿泉の入った銚子

で、ここからが本題です。

この時、出てきたのがこれです。

お調子

「引用:https://tabelog.com/toyama/A1601/A160101/16000240/dtlphotolst/7/smp2/

 これは、徳利とも、銚子を合わせたような「雲助徳利(うんすけどっくり)」というもの。

つまり

徳利

銚子

雲助徳利

みたいな感じ。

注ぎ口があって、大変に使い勝手が良いものでした。

見つからない

自宅では、瓶から直接、器に注いでいましたが、720mlサイズならまだしも、1.8lサイズの場合は重いし、こぼれるし、ハッキリ言って美しくありません。

普通の徳利や、片口も使ってみましたが、どうもすっきりしない。

特に片口の場合、注ぐことを目的としていないものが多いようです。

また、土瓶蒸し用の容器も試してみましたが、なにか違う感があります。

その点、この雲助徳利は、注ぎ口がついていて使いやすい。

なにより、美しい!

そんなわけで、雲助徳利を買うことを決意したわけです。

その後、いくつかの陶器市をめぐってみましたが、これがなかなか無い!

岐阜県土岐市は、日本でも有数の陶磁器製産地です。

その中でも、下石(「おろし」と読みます)地区には「とっくり村」があるくらい、とっくり生産が盛んなのですが、そこで探しても見つからない。

実際には、全く無いわけではなくて、「気に入るものがない」というのが正解です。

「松月で出されものを、探せばいいじゃん」と思われるかもしれませんが、やはり自分で買うとなると、イロイロと思いが追加されます。

そんなに無理難題とは思っていませんでしたが、探して見ても出会えませんでした。

オーダーメイドという選択

そこで考えたのが、無いのなら、作ってしまえば良い。

そうだ、作ってしまおう。

と言っても、自分では作れないから、オーダーメイドか?

よしこれで行こう。

となったわけです。

オーダーメイド食器は敷居が高い

結論からいうと

ちょっと難しいですね。

特にこだわりがありすぎると、無理です。

食器というか、「陶芸は芸術なのである」ということを思い知らされます。

でも、プレゼントとして考えた場合には、とても良いと思います。

オーダーメイドに最適なもの

良い物を使いたいということ

食器に限ったことではないですが、多くの消費財には、手に入れやすいものから王侯貴族専用のものまで、選択肢がたくさんあると思います。

特に日本で陶器(せともの)の食器を買うことを考えた場合にその差はとても大きいです。例えばお茶碗が欲しいと思った時の選択肢としては。、近所の100均で買えるものから、数億円の国宝レベルのものまであり、その差は100万倍です。

物の値段は何で決まるのか

なぜこんなに差があるのでしょうか?

例えば、スマートフォンで比較すると、最新のiPhoneと、格安スマホで価格差は10倍ぐらいでしょうか。

スマホの場合、単純に「機能・性能」によって価格差が発生しているのに対して、お茶碗の場合、100均のお茶碗でも、国宝のお茶碗でも「機能・性能」にはあまり差がないと思います。

また、絵画などの美術品で考えた場合、絵画の機能は「壁に掛かる」ことで、それがないと生きていくうえで困ることは無いのですが、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵などは、オークションで500億円の値がつきます。

お茶碗も絵画と同じように「美術品」としてのデザイン性や歴史が加わって値段が決まるということです。

絵画と違うところは「機能」も重要な要素で、美しいだけでなく「機能美」が求められることです。

値段ではなく愛することが最初

美術的な価値で物を見ると、「気に入る」「気に入らない」は、それを買う人の本人の感性と、物の感性が重なり具合で決定されます。

使う本人が良いと思えば、それが一番のものなのです。

じゃあ、値段はなに?ということでになりますが、値段は相対的なものですね。

本人の感性が主体的とすれば値段は相対的なものです。

多くの人が「よいもの」と思えるのであれば値段が高くなるのです。

ただしこの場合の良いものとは、「他の人が買うのであれば、適正とおもう価格」なので、思いよりも「原価」や「工賃」や「ブランド」などの要因が大きくなります。

とすると、食器の様に美術的な価値が高いものに関しては、値段で考えるのではなく、自分が欲しいと思えるものにどれだけの価値を見出すかということになります。

気に入ったものなのかな?愛せるものなのかな?と考えて、気に入ったもの、愛せるものであると思ってから値段をみて判断すると、良い買い物ができるはずです。

毎日使うものだから愛せるものを

朝食でコーヒーを飲む時に「良いカップだなぁ」と感じることができれば、毎日が楽しくなると思いませんか?

お茶碗でも、箸でも、美しく気に入ったものを使えばココロが軽くなるし、食事も楽しくおいしくなります。

料理のおいしさって、食器が良くなるだけで随分と違ってきます。

またデザイン性の高いものや、美術的な価値があるもの毎日使うと、使っている人の美術的なセンスや感性も高まります。

食器をオーダーメイドするということ

絵画などと違って、食器には実用も求められます。

単純にデザインが良いだけでなく、使いやすいものであるか、毎日使うことができるものであるかも気になりますね。

高島屋などの百貨店を探しても、どの店も同じようなものどころか、同じブランドが並んでいるだけです。

ハンズなどに行け、ちょっと変わったブランドのものが置いてあることがありますが、それでも定番が多いですね。

狙い目としては、美術館のミュージアムショップです。

当然その美術館が得意としているものが、ショップでも置かれていることが多く、MOA美術館であれば日本的なものが多く、国立近代美術館であれば現代的なものが多く置いてあります。

また、各地の陶芸美術館のミュージアムショップでも多くの作品が置かれていますが、地域性が高いのが特徴ですね。

たとえば、佐賀県のミュージアムショップでは有田焼が、岡山のミュージアムショップでは備前焼が多いです。

食器、特に陶磁器が少な人は、お店で商品を眺めるだけで楽しいので、機会を見つけて何件もショップ巡りをし、運命の出会いを探すのも良いのですが、できれば早く手に入れたいと思うものです。

そうなると、探すよりオーダーメイドで作ってもらうほうが良いのではと考えます。

オーダーメイドできる食器って?

食器と言っても、幅広いものです。

これまで、陶磁器を中心に考えてきましたが、食器のかなには箸やフォーク・ナイフなどのカトラリーから、グラスや弁当箱・ランチボックスなども食器の分類になります。

素材で考えると、漆器は木と漆、スプーンはスレンレスや銀などの金属、グラスはガラス、お皿や丼は陶器や磁器などになります。

イギリスのヴィクトリア朝の時代(19世紀後半〜20世紀前半)は、産業革命などにより、これまでの貴族の他、多くの資本家が産まれました。

これらの富裕層は、家の紋章をかたどった、カトラリーや食器を使っており、当然オーダーメイドになります。

日本でも、各地の公開された旧家などでは、漆器に家紋を施したものが展示してることが多いですね。

当然、昔の工芸品はすべて手づくりなので、少量のオーダーメイドに向いていた言えそうです。

現代で考えると、「オーダーメイドできる食器」というのは、手作りのものであることが条件となるでしょう。

その視点で考えると、オーダーメイドできる食器が絞られてきます。

食器の種類 素材 オーダーメイド オーダーメイドの可能性
フォーク
ナイフ
スプーン
ステンレス

×

素材が木であれば、手作りのものだあるので、オーダーメイド向き。 金属の場合、手作りは少ないので少量のオーダーメイドは難しいかな。

カトラリーを専門に作成しているところでなく、ステンレス加工を専門に扱っているところならば、カトラリーもオーダーメイドできる可能性が高いです。

単純な形に見えてカトラリーは直接口に触れる部分が多く、それなりのノウハウが含まれているので、専門でないところでオーダーした場合、形は良くても使い勝手が悪いということになる可能性が高いです。

 

箸の専門店に言っても、一部の高級塗りを除いて、すごく安いですね。簡単な形状なので機械加工しやすいのかも。茶道の世界だと、自分で竹を削って箸を作ったりしますね。 オーダーメイドというより、自分で作るハンドメイドのイベントに参加して自分で作るのが一番の近道かも。

茶碗

カップ

陶磁器

(せともの)

陶磁器(せともの)であれば、作家と呼ばれる手作り職人が日本にはたくさんいるので、お願いすれば作ってくれる可能性が高いですね。

陶芸教室も各地にあるので、自分で作るのも簡単です。岐阜県にある多治見現代陶芸美術館や愛知県の陶磁美術館などでは、1000円程度から当日申し込みで作陶ができます。ろくろや釉薬も使えるのでかなり本格的なものがを作ることができます。ただし、技術とセンスが必要なので「おもってたんとちがう」ということになる可能性が高いですね。

お盆

カップ

漆器   漆器と言っても、プラスチックのベースにウレタン塗装を行ったものから、木地の作成から漆の塗まで手作りで行っている工房まで、様々か形があります。輪島塗や川連漆器などの漆器の産地では、手作業で作っている工房が多いですね。漆器の作成は素人には絶対に無理なので、自分で作るハンドメイドは考えないほうが良いです。
グラス ガラス

ガラスを使ったグラスで考えた場合、工業生産品と手作りでは全く世界が異なっています。オーダーメイドを考えると、吹きガラスなどの手作りガラスであれば可能性が高いです。

ガラスの加工では、熱した熱く柔らかいガラスを固まらないうちに形作る必要があるため、複雑な形にすることは難しいです。

ガラスの場合、グラスの形を作ることと、表面に模様を施すことは別の工程となるため、両方を同時に同じ所でオーダーするのは難しい可能性があります。

実際にオーダーメイドしたと仮定したら

「よし!」と思い立って、「オーダーメイドするぞ!」と決めたとして、実際問題どうすれば良いのでしょうか?

いきなり作家さんに向かって、お願いしたとしても思っていたものと違うものが出来上がる可能性が高いです。

(素人の思いより、作家さんに任せたほうが思っていたのより良い物ができるか可能性も高いですが・・・)

実際にオーダすることを想定してシミュレーションしてみましょう。

自分の思いを具体化する

言葉だけで伝えても、伝わりきらないことがあります。

下手でも良いので、絵にすることからはじめましょう。

絵にすることで、考えもまとまるし、実はありえない組み合わせや、実際に形にすると不格好であることがハッキリします。

譲れないところと、そうでないところを決める

全部が思い通りに行かないこともあります。

例えば、カップの持ち手を紙のように薄くしたいと考えても、すぐに壊れてしまうようなものは、作ってもらえません。

そもそも何を目的としてオーダーメイドするのかのをはっきりさせたうえで、絶対に譲れないところと、そうでないところを決めます。

コップなどの場合、「両手で持てるように左右に取っ手は、必須であるが、色や模様にはこだわりが無いので、イエローの明るめであれば何でも良い」とかですね。

オーダーメイドのレベル

オーダーメイドといえば、ウェディングドレスやスーツ・靴が思い浮かびますね。

ドレスやスーツのオーダーメイドでも、いろいろなレベルがあります。

ほぼ、全てのことを選択できるフルオーダーに対して、サイズやデザインのパターンを組み合わせてオーダーする、イージーオーダーとかパターンオーダーとか呼ばれているものもあります。

自走車を新車で買うときに、ボディカラーやオプションを選択したあと、工場で生産されるので、これもパターンオーダーと言えそうです。

Tシャツに好きな写真をプリントするのも、ある意味イージーオーダーになりますね。

お皿やマグカップのオーダーでは、パターンオーダを受け付けてくれる窯元や工房が多いですね。

「おとうさんありがとう」や「結婚しました」みたいな文字だけ入れる場合などは、形や大きさを選択して、入れたい文字をお願いするだけで自分だけの食器が出来上がります。

文字だけじじゃなくて、写真や色も選択可能なところもありますね。

ちょっと注意が必要なのは、1個単位で作成可能かどうかということですね。

やきものの場合、焼いている最中に手出しができないので。どうしても焼きムラなとで良くないものができることがあります。

窯元ではそういうことを想定して、注文数よりいくつか多い数を作って焼きます。

たとえ1個だけの注文でも、保険のために最低でも2個作ることになるため、コストがかかります。

そのため、最小作成数(ロット数とも言いますね)が10個とか必要になることもあります。

結婚式で引き出物に入れたり、企業がイベントや販促で配ったりする場合にはそれなりの数が必要になるので、陶磁器のパターンオーダーはそのような場合に使われることが多いですね。

オーダーメイドを頼む

パターンオーダーに対して、完全にゼロから作ってもらう場合をフルオーダーとして考えてみます。

陶磁器や漆器、ガラスなどの食器の場合、手作りで作っているところがたくさんあります。

手作りでも、各工程でそれぞれ専門の職人さんがいる場合と、最初から最後まで全部一人の人間で作る場合があります。

どちらが良いか悪いかという話ではないのですが、「作家」とか「アーティスト」系のひとは全部一人でやっていることが多いですね。

手作りの場合、フルオーダーでのオーダーメイドに対応してもらえる可能性が高いです。

特に、全ての工程を一人で行っている窯元や工房であれば、「お金さえ出せば何でも作ってくれる」と考えても良いです。

つまりは、芸術品・工芸品の扱いですね。

そう、芸術品・工芸品なので注意が必要です。

せとものの茶碗は、「粘土をこねて、色塗って焼けばよい」という単純なものではありません。

それぞれの工程で技術や知識が集まって出来上がっています。

完成したものを見ただけでは気が付かないところに、どれだけこだわって時間をかけたかが作品の良し悪しを左右することになります。

陶器の作家と呼ばれている人の中には、昔ながらの「薪を使った登り窯」で焼くことにこだわりと持っている方もいます。

自然が創りだす「炎の変化を陶器に移す」ことを作風としているのです。

なので、作家さんにオーダーメイドを頼むということは、まずは作家を選ぶことが一番重要となります。

まとめ

先にも書きましたが、ウェンディングドレスにしても、スーツにしてもオーダーメイドできるものって、ある程度の決まったスタイルがあって、その中で個性や使い勝手を出すためにオーダーメイドするというスタンスですね。

どちらかといえば、デザインより体型や用途に合わせた実用面でのオーダーする比重が高いように思います。

衣服関係以外のオーダーメイドできるものでは、オーダー家具がありますね。

オーダー家具も、ドレスやスーツと同じように、家のサイズや収納数が重要で、それが決まったうえでデザインの選択になります。

その点、個人での食器をオーダーメイドすることは、デザイン面での希望が重要になる場合が多く、機能面での定番が無いのが難しいところです。

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